SELECT * FROM the_universe

せれくと ふろむ ざ ゆにばーす

2種類の数学

2種類の数学とは

問1 「数学ってどんな学問か知ってる?」

この問いを少しだけ考えてみてだください。綺麗な回答ができましたでしょうか?

実はこの問いは、私が大学生に数学を教えるときに何度も学生に問うてきた質問です。その返答といえば、

「ええっと、sinとかlogとか、なんか計算したりする学問」
「図形とかの面積や体積を求めたりするための道具」
「ややこしい記号を使って記述する論理学」

などなど、間違ってはいないけれども、どれも言葉が不足していますし、数学という学問の本質が全く見えていない回答です。この問いの答えは、誤解を恐れずざっくり言えば、数学とは、

(*)「ものの集まり(集合)に自分が見たい構造を入れて、その集まりに普遍的にどんなことが成り立っているのかを暴き出す学問」

です。そして、この記事のタイトルである「2種類の数学」とは、(*)の言っている意味がはっきりわかる人の「数学」(「大学で学ぶ数学と言ってもいい」)と、わからない人の「数学」のことを言っています。

つまり(*)の意味を理解することが、冒頭の問1に対する回答を理解するということになります。

ものの集まり・構造を入れる

「ものの集まり」というのは、中学や高校で習う「集合」のことです。集合とは何か?という掘り下げをすると明後日になってしまうので、ここでは、学生時代に習った程度のイメージで問題ありません。

さて、問題は「構造を入れる」という言葉の意味です。

まず、\( X = \{ きんぎょ、 いんこ、 くじゃく \} \)という集合があったとします。ここで、下記の問2をよ~く考えてみてください。

問2 いんこと一番「近い」のはきんぎょか?くじゃくか?

同じ鳥だからという理由でくじゃくを選択された方、ペットになるという理由できんぎょを選択された方*1、様々だと思いますが、そんなの決めようがない!と思われた方が正解です。なぜなら、\( X \)はまだ、きんぎょ、いんこ、くじゃくというものが集まっているだけで、「近さ」という構造をまだ持っていません。

ではどうすればいいか?この集合\( X \)の要素の間に、「こいつとこいつはこれくらい近い」という近さの概念を入れてあげればいいのです。数学には「位相(topology)」といった近さの一般化された概念があり、それをこの単なる「ものの集まり」である\( X \)の中に「上手に」入れることができれば、\( X \)の要素間に「近さ」が与えられ、「いんことくじゃくが近い」という日本語に意味を持たせることができるというわけです。

これが「構造を入れる」ということです。必要な、あるいは分析したい構造を、\( X \)に上手に持たせることができれば、あとはその上に関数だ写像だを取って、あれやこれや分析していくだけです。

まとめ

今回お話しした内容は、あくまで「数学」という学問への世間の認識がずれている(あるいは誤っている)ことを主張したかっただけですので、「だから何?」という印象を持たれた方もいるかもしません。

ただ、ここで重要なことは、数学という学問は「数字」を相手にするだけではない、ということです。ものの集まりにある種の構造を入れることによって、その集まりの性質を分析するわけですから、何も数の集まりだけが分析の対象にはならない、ということが大事なことなのです。つまり、言語であれ何であれ、数学の論理で内包できるものは数学で解決できる(かもしれない)ということです!

そのように正しく理解しておくと、「数学を勉強することに意味がない」なんてこと、もはや言えませんよね!*2

*1:実は、私の母校では、卵からふ化させてクジャクをペットとして飼っている人がいました。ちなみに、クジャクは「サカタニ」という名前でした。とっても可愛かったです!

*2:これは、数学なんて勉強したって意味がないなどと、ドヤ顔で平気で言ってしまうような、学校や予備校の先生への嫌味であり批判です。そういう人には、もっと勉強してほしいものです。